ウッズ復活Vで報われたナイキ、「失われた10年」支える

By Suzanne Vranica and Khadeeja Safdar

2019 年4 月16 日08:05 JST   WSJ

 

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 米スポーツ用品大手ナイキはタイガー・ウッズ(43)が女性問題やけがで不振に陥った「失われた10年」の間、スポンサーを降りることなくウッズに寄り添ってきた。

 米男子ゴルフのマスターズ最終日の14日、ウッズが優勝を果たしたことでナイキの忠誠心は報われた。予想を覆す逆転で大会を制覇し、専門家の間ではスポンサー契約が再始動する可能性や、ナイキのゴルフ事業への追い風が指摘されている。


 テレビ放映の暫定集計からは、ウッズがゴルフ事業にもたらす影響力が健在であることが読みとれる。米西海岸の視聴者にとっては早朝の6時にスタートしたにもかかわらず、CBSテレビが放映した最終ラウンドは高い視聴率を記録した。生放送と再放送を合わせた視聴率は、テレビを持つ米家庭全体における放映中のシェアが11.1パーセント、放映時間帯に実際にテレビをつけていた家庭に占めるシェアは29%に達した。


 約10年前に不倫騒動が浮上するまで、ウッズは米広告業界でもとりわけ影響力の強い広告塔だった。だがイメージを悪化させるスキャンダルが相次いだことで大手ブランド各社がスポンサーを降り、多額の契約金も消えた。米通信大手AT&T、コンサルティング大手アクセンチュア、食品・飲料大手ペプシコ傘下のゲータレード、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)傘下のジレットなどがスポンサー契約を打ち切り、スイスの高級時計ブランド、タグ・ホイヤーも契約更新を見送った。


 著名人の魅力度や消費行動への影響力を調査するマーケティング・アームによると、2010年のウッズの影響力スコアは51.27だった。これは俳優チャーリー・シーンや、かつてナイキがスポンサーとなった元自転車ロードレーサーランス・アームストロング(ドーピング違反で競技から永久追放)の現在のスコアと同程度だ。


 ここ数年はやや改善し、1月時点のスコアは56.6となったが、依然としてピーク時を大きく下回る。


 ナイキは、落ちぶれたウッズを見捨てなかった数少ない企業の一つだ。ナイキ創業者で元最高経営責任者(CEO)のフィル・ナイト氏は回顧録で、ウッズは家族の一員のようだと語り、自身の息子がスキューバダイビングの事故で亡くなった際、ニュースを聞いて真っ先に電話を掛けてくれた人々の一人だったと回想。「私のいる前でタイガーの悪口は許さない」と記していた。


 ウッズはここ数年、エナジードリンクのモンスター・エナジーや高級時計ロレックスなどと新たなマーケティング契約を交わした。だがゴルフの成績が低迷し、度重なるけがにも悩まされる中で広告影響力は弱まった。優勝はおろか競技への復帰も危ぶまれていた。


 今回の優勝で、トップアスリートに返り咲くことができるかもしれないとの見通しは強まる。スポーツの世界では受け入れられる可能性が高いとマーケティングの専門家は指摘する。


 バーンズ・エンターテインメント・アンド・スポーツ・マーケティングのボブ・ウィリアムズCEOは「スポーツファンは不祥事を起こしたアスリートに非常に寛容であることが分かっている」と指摘する。


 新たな契約が見込まれるものの、ウッズが最盛期のような大型契約をいくつも取り戻すとは思えないとの声も出ている。ウィリアムズ氏は「極めて保守的な企業との契約は難しい」だろうと付け加えた。